旬の説が真逆で存在する珍しい魚「のどぐろ」

小樽港海の幸お届け便り vol.101

全国的な知名度の上昇とともに、近年、市場の価格もどんどん高まっている高級魚「のどぐろ」は、正式名称を「アカムツ」と言います、「アカ」は文字通り見た目の赤色、「ムツ」は脂っこいという意味の「むつっこい」という言葉から来ているそうです。「ムツ科」の魚のクロムツや本ムツにも似ていますが、分類学上は「ムツ科」ではなく「ホタルジャコ科」に属しています。

「東のキチジ(きんき)、西のアカムツ(のどぐろ)」とも言われ、最近は全国的にとても人気が出ている魚です。魚を知り尽くした漁師たちをして「日本海で一番うまい魚」と言わしめる力強い旨味が「のどぐろ」にはあります。季節を問わず脂が乗っており、やわらかい身は口の中でとろけるほどで「白身のトロ」とも言われています。それ故か、最も美味しいとされる時期には諸説があり、晩秋から冬が最も美味しいという説や、産卵前の夏7月から8月が最も美味しいとする説など、旬の説が真逆で存在する珍しい魚です。

「のどぐろ」という呼び名は、その名の通り、喉の奥が黒いことから名付けられた通称で、もともとは北陸や山陰で使われていましたが、人気の広がりとともに全国に浸透し、現在では正式名称より有名な呼び名となりました。

サイズは大きいものだと50cmを超えますが、市場に出回るのは、大きいもので35〜40cm程、一般的には20cm前後のものが多いようです。生息地は広く、日本海では青森県以南、太平洋では北海道以南のいずれも九州南岸くらいまで。また東シナ海沿岸などの大陸棚にも広く分布しています。全国各地の漁港で水揚げされますが、太平洋側よりも日本海側で多く獲れ、富山や福井などの北陸から島根など山陰地方の特産として有名です。

食べ方は、どんな調理をしても美味しい「のどぐろ」ですが、定番としては「干物・一夜干し」、「刺身・寿司」、「塩焼き」、「煮付け」、「しゃぶしゃぶ・鍋」などがあげられます。旨味が凝縮された干物について「のどぐろ特有のコクのある甘味は、干物にしてこそ引き立つ」と言う人もいるほど、のどぐろの最も身近な楽しみ方です。生で食べる刺身や寿司は、醤油に油膜が浮き上がるほど脂がのった身をさっぱりと楽しむことができます。

のどぐろの上品な脂を思いきり味わいたいなら、シンプルに塩焼きにするのがイチオシです。パリパリの香ばしい皮を箸で崩すと、甘みたっぷりの脂がじゅわっと染み出してきます。夏から秋の産卵期に子持ちのどぐろが手に入ったら、甘辛いタレでふっくらと仕上げる煮付けも美味です。ふわふわしたやわらかい身と、とろけるような口どけは格別です。

そして寒い時期にのどぐろを味わうなら、何と言ってもしゃぶしゃぶや鍋料理が絶品です。のどぐろの身はもちろん、だし汁に旨味が溶け出し、至高のスープが楽しめます。シメの雑炊は、旨味を吸ってこれまた美味です。

人気が出てくると獲りすぎによる漁獲高の減少が心配になります。実際「ここ数年、漁獲量の減少だけでなく、魚も小さくなっている」との報告も出ています。一方、2013年(平成25年)に富山県水産研究所が、新潟市水族館「マリンピア日本海」などとの共同研究で、人工授精で生まれた稚魚の育成に成功しました。その後、稚魚がある程度大きく育つまでの環境が研究され、2017年(平成29年)2月には5.5万匹の本格的な放流がスタートしました。放流されるたのは体長約5センチ程だそうですが、約4年後には約25センチ程の漁獲対象サイズに成長するそうです。ここでも漁獲量と資源保護とのバランスが求められています。




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かつて江戸から明治にかけて日本各地と北海道を結んだ北前船という商船がありました。
その頃から小樽を大きく発展させてきた「春告魚」とは鰊のこと。
ここから始まった小樽の水産加工の歴史は創業100年を超える企業を作り出してきました。
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